Web音遊人(みゅーじん)

YEV104PRO/YEV105PRO

音色と響きを磨き上げたステージ仕様の上位モデル、 エレクトリックバイオリン「YEV104PRO/YEV105PRO」

ステージ映えするデザインと高い演奏性で唯一無二の存在感を放つヤマハのエレクトリックバイオリン。
2024年秋発売の上位モデルは、さらに磨き上げた音色と響きでバイオリン奏者の新たな表現を引き出してくれそうだ。

ステージユースに特化したデザインとアコースティックの音色と響き

2016年の発売時、メビウスの輪を思わせる斬新なデザインが注目を浴びたヤマハのエレクトリックバイオリン。今秋リリースされた上位モデル「YEV104PRO(4弦仕様)」「YEV105PRO(5弦仕様)」は、奏者の表現力を最大限に引き出す豊かな響きと高い演奏性、ステージ映えするカラーリングが特徴となっている。
そもそもエレクトリックバイオリンとは、弦の振動をピックアップで拾い、電気信号に変換して出力する楽器。弓で弦をこすって音を出すところはアコースティックバイオリンと同じだが、音の出口はスピーカーであるため、音量のコントロールが容易だ。ステージ演奏やバンドでの演奏といったセッションの場でも音負けせず奏でられるほか、自宅練習といった幅広いシーンで楽しめる。
「エレクトリックバイオリンは、アコースティックバイオリンと同様の演奏性でありながら多彩な表現ができる楽器として、プロからアマチュアまで幅広い奏者に支持されてきました。今回発売となった上位モデルは、既存モデルの『YEV104/105』をベースにしながら、アコースティックバイオリンを弾いてきた奏者の繊細な弓使いを音色変化につなげられる楽器を目指しました」と語る、開発担当の松嶋朗生さん。
バイオリンをはじめとする擦弦楽器は、ふだんアコースティック楽器を演奏する奏者がほとんどだ。そのため、上位モデルでは、アコースティックバイオリンの表現力をさらに細かく再現するところに重きが置かれたという。

松嶋朗生さん

開発を担当した松嶋朗生さん。生産技術に携わった後、エレクトリックバイオリンの開発に携わる。幼いときからバイオリンに親しみ、オーケストラで演奏を続ける奏者の目線も開発に生かされた。

ボディ構造とブリッジの改良で楽器の表現力を上げる

アコースティックの表現力を追求するにあたりポイントとなったのは、ボディを空洞化し、両側面にスリットを入れたこと。
「内部に空洞を作ることで軽量化できただけでなく、軽くなった分、楽器がよく振動するようになり、明るく抜けのよい音になりました。また側面のスリットは、入れる場所や長さによって音色が大きく変わることがわかりました。左右の片側だけに入れたり、長さをいろいろ変えたり、時間をかけてさまざまなパターンを試しました」(松嶋さん)

弦の振動を拾うピックアップが内蔵されたブリッジ(駒)の改良も、アコースティックの音と鳴りに近づけるのに効果的だった。
「マイクの役割を果たすピックアップは、素子がむき出しの状態では、弦の振動を拾う際、周囲の電気的なノイズも一緒に拾ってしまう特性があります。そのため、ノイズを防ぐシールドカバー(金属製のカバー)を付けていますが、ブリッジの動きをできるだけ妨げない工夫を施し、弦の振動エネルギーを効率よく音に変換できるようにしました。さらに、外部のスピーカーから迫力のある低音が鳴るように、楽器やピックアップに合わせた専用の電気回路を新たに開発し搭載しています」(松嶋さん)

また、音づくりにおいて指標になったのは、奏者が気持ちよく演奏できるかどうか。
「ビブラートをかけたときや、高音に上がっていく時など、奏者のなかに『音色がこう変わったら気持ちいいな』という無意識の感覚があるように思います。私もふだんからバイオリンを弾くため、ビブラートをかけたときの音色変化と高音の伸びやかさには特に時間をかけてこだわりました。なお今回の開発では、音色に大きな影響を与えるボディ側面のスリットや電気回路について、他の楽器の開発者・技術者から多くのアドバイスをもらったことも、ゴールにたどり着くうえで重要だったと思います」と、松嶋さんは教えてくれた。

木材の質感を生かしながらステージ映えする色に

デザインは、どの角度から見てもバランスのよいフォルムはそのままに、ステージで存在感をアピールできるカラーリングを模索したという。
「木材のナチュラルな質感を生かしつつ、バリエーションのひとつとして、面積が広く目立つ部分(指板と表板)に色をつけたモデルを作ろうと思いました。赤を採用したのは、アーティストから指板を赤にする提案があったことがきっかけですが、赤がいちばん存在感があるという結論に達するまでにいろいろな色を検討しました」(松嶋さん)

最終的に、赤といっても、鮮やかな色ではなく、日本らしい和を感じる色(ディープ・レッド)を採用。また、ナチュラル系の2色についても、天然木の木目や質感を生かした塗装になっているのもポイントだ。
「天然木の美しさを生かしたかったため、ボディ部分には木目が美しく見えるように光沢感を出し、指板やネック、フレームはつや消しにする、というように場所によって塗装を変えています。また楽器の塗装は、見た目の美しさだけでなく、耐久性を確保する役割もあります。外観と耐久性、ふたつを両立させることにおいて多くの試行錯誤がありました」(松嶋さん)

YEV104PRO

ギターのなかでエレキギターがひとつのジャンルを確立したように、エレクトリックバイオリンによって、多様な音楽やパフォーマンスが生まれてほしいと松嶋さんは語る。
「エレクトリックバイオリンによって、わくわくするような新しい音楽やパフォーマンスが生まれてほしいです。今は自分の演奏や作品をSNSで気軽に発表できますので、いろんな形でエレクトリックバイオリンを面白がっていただき、『私もバイオリンを弾いてみたい!』と思う方が増えてくれたらうれしいです」

ライブステージで大音量で弾けるだけでなく、自宅で静音で演奏もでき、メンテナンスの手間も少なく済むエレクトリックバイオリン。アコースティックバイオリンを弾いている奏者はもちろん、バンドに弦楽器を取り入れたい方、楽曲制作をしている方など、バイオリンという楽器に興味のある方は一度触れてみてはいかがだろうか。

スタイリッシュでステージ映えするデザイン

木材のナチュラルな美しさを生かしつつ、ステージ上で存在感を放つ上位モデルのデザイン。3つのボディカラーのうち「ディープ・レッド」は、多様な楽器が集まるバンド演奏でも埋もれないインパクトが特徴。

●天然木の質感を生かした塗装
表板は、木目の模様を引き立たせる光沢感のある塗装に。一方のフレームは、木材の凹凸をあえて残し、つや消しの塗装に。スタイリッシュながら、天然木のあたたかみを感じさせる。YEV104PRO/YEV105PRO


●高級感のある箔押しのロゴマーク
ヤマハのシンボルである音叉マークのステッカーは、高級感のある金属の箔押しを採用。自然光やステージのライトでさりげなく輝く。YEV104PRO/YEV105PRO


●細部まで統一したカラーリング
あご当ての周りは、パーツをつなぐ金具もブラックに統一。細かい部分も含めて統一感が考えられている。YEV104PRO/YEV105PRO

音色や響きが進化した上位モデルのこだわり

アコースティックバイオリンの音と鳴りを再現するため、ボディの構造やブリッジの仕様を改良。
新しい技術・パーツを取り入れることで、操作性も上がっている。

YEV104PRO/YEV105PRO

 


Yamaha Electric Violin YEV PRO

Yamaha Electric Violin YEV PRO Artist Special Performance – Naoto Sakiya × Daisuke Asakura

【おしえて!北床さん】YEV PROを開封して弾いてみよう

■YEV104PRO/YEV105PRO

アコースティックバイオリンのような音色から、エレクトリック(電気)を用いた音色まで多彩な表現が可能。音量調節が自在で、ライブ演奏だけでなく、自宅での練習や音楽制作にも幅広く使える。4弦仕様と5弦仕様があり、それぞれ 3色のカラー展開。

詳細はこちら

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:反田恭平さん「半音進行が使われている曲にハマります」

18209views

音楽ライターの眼

「ゴルトベルク変奏曲」を弦楽器で聴く歓び

6830views

トランスアコースティックギター「TAG3 C」

楽器探訪 Anothertake

デジタル技術が広げるアコースティックギターの可能性──トランスアコースティックギター「TAG3 C」

3912views

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

25470views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

13597views

オトノ仕事人 ボイストレーナー

オトノ仕事人

歌うときは、体全部が楽器となるように/ボイストレーナーの仕事(前編)

28146views

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

ホール自慢を聞きましょう

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

14133views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

8734views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

見るだけでなく、楽器の音を聴くこともできる!

15537views

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

われら音遊人

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

9995views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

6765views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

34971views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

14820views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

14566views

ブラック・サバス

音楽ライターの眼

2025年7月、ブラック・サバス最後のライヴが実現。“出演しない”アーティストを検証する

8843views

地代所悠/コントラバスヒーロー

オトノ仕事人

「コントラバスヒーロー」として音楽と三浦半島の魅力を伝える/音楽で活躍するご当地ヒーローの仕事

2710views

上海ブラスバンド日本支部

われら音遊人

われら音遊人:上海で生まれた縁が続く大家族のようなブラスバンド

3818views

マーチングドラムの必須条件とは?

楽器探訪 Anothertake

マーチングドラムの必須条件とは?

12871views

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

ホール自慢を聞きましょう

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

14133views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

6430views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

32110views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

6486views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28190views