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今月の音遊人:松井秀太郎さん「言葉にできない感情や想いがあっても、音楽が関わることで向き合える」
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音色と響きを磨き上げたステージ仕様の上位モデル、 エレクトリックバイオリン「YEV104PRO/YEV105PRO」
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2024.12.13
tagged: エレクトリックバイオリン, YEV PRO, YEV104PRO, YEV105PRO, 楽器探訪
ステージ映えするデザインと高い演奏性で唯一無二の存在感を放つヤマハのエレクトリックバイオリン。
2024年秋発売の上位モデルは、さらに磨き上げた音色と響きでバイオリン奏者の新たな表現を引き出してくれそうだ。
2016年の発売時、メビウスの輪を思わせる斬新なデザインが注目を浴びたヤマハのエレクトリックバイオリン。今秋リリースされた上位モデル「YEV104PRO(4弦仕様)」「YEV105PRO(5弦仕様)」は、奏者の表現力を最大限に引き出す豊かな響きと高い演奏性、ステージ映えするカラーリングが特徴となっている。
そもそもエレクトリックバイオリンとは、弦の振動をピックアップで拾い、電気信号に変換して出力する楽器。弓で弦をこすって音を出すところはアコースティックバイオリンと同じだが、音の出口はスピーカーであるため、音量のコントロールが容易だ。ステージ演奏やバンドでの演奏といったセッションの場でも音負けせず奏でられるほか、自宅練習といった幅広いシーンで楽しめる。
「エレクトリックバイオリンは、アコースティックバイオリンと同様の演奏性でありながら多彩な表現ができる楽器として、プロからアマチュアまで幅広い奏者に支持されてきました。今回発売となった上位モデルは、既存モデルの『YEV104/105』をベースにしながら、アコースティックバイオリンを弾いてきた奏者の繊細な弓使いを音色変化につなげられる楽器を目指しました」と語る、開発担当の松嶋朗生さん。
バイオリンをはじめとする擦弦楽器は、ふだんアコースティック楽器を演奏する奏者がほとんどだ。そのため、上位モデルでは、アコースティックバイオリンの表現力をさらに細かく再現するところに重きが置かれたという。
アコースティックの表現力を追求するにあたりポイントとなったのは、ボディを空洞化し、両側面にスリットを入れたこと。
「内部に空洞を作ることで軽量化できただけでなく、軽くなった分、楽器がよく振動するようになり、明るく抜けのよい音になりました。また側面のスリットは、入れる場所や長さによって音色が大きく変わることがわかりました。左右の片側だけに入れたり、長さをいろいろ変えたり、時間をかけてさまざまなパターンを試しました」(松嶋さん)
弦の振動を拾うピックアップが内蔵されたブリッジ(駒)の改良も、アコースティックの音と鳴りに近づけるのに効果的だった。
「マイクの役割を果たすピックアップは、素子がむき出しの状態では、弦の振動を拾う際、周囲の電気的なノイズも一緒に拾ってしまう特性があります。そのため、ノイズを防ぐシールドカバー(金属製のカバー)を付けていますが、ブリッジの動きをできるだけ妨げない工夫を施し、弦の振動エネルギーを効率よく音に変換できるようにしました。さらに、外部のスピーカーから迫力のある低音が鳴るように、楽器やピックアップに合わせた専用の電気回路を新たに開発し搭載しています」(松嶋さん)
また、音づくりにおいて指標になったのは、奏者が気持ちよく演奏できるかどうか。
「ビブラートをかけたときや、高音に上がっていく時など、奏者のなかに『音色がこう変わったら気持ちいいな』という無意識の感覚があるように思います。私もふだんからバイオリンを弾くため、ビブラートをかけたときの音色変化と高音の伸びやかさには特に時間をかけてこだわりました。なお今回の開発では、音色に大きな影響を与えるボディ側面のスリットや電気回路について、他の楽器の開発者・技術者から多くのアドバイスをもらったことも、ゴールにたどり着くうえで重要だったと思います」と、松嶋さんは教えてくれた。
デザインは、どの角度から見てもバランスのよいフォルムはそのままに、ステージで存在感をアピールできるカラーリングを模索したという。
「木材のナチュラルな質感を生かしつつ、バリエーションのひとつとして、面積が広く目立つ部分(指板と表板)に色をつけたモデルを作ろうと思いました。赤を採用したのは、アーティストから指板を赤にする提案があったことがきっかけですが、赤がいちばん存在感があるという結論に達するまでにいろいろな色を検討しました」(松嶋さん)
最終的に、赤といっても、鮮やかな色ではなく、日本らしい和を感じる色(ディープ・レッド)を採用。また、ナチュラル系の2色についても、天然木の木目や質感を生かした塗装になっているのもポイントだ。
「天然木の美しさを生かしたかったため、ボディ部分には木目が美しく見えるように光沢感を出し、指板やネック、フレームはつや消しにする、というように場所によって塗装を変えています。また楽器の塗装は、見た目の美しさだけでなく、耐久性を確保する役割もあります。外観と耐久性、ふたつを両立させることにおいて多くの試行錯誤がありました」(松嶋さん)
ギターのなかでエレキギターがひとつのジャンルを確立したように、エレクトリックバイオリンによって、多様な音楽やパフォーマンスが生まれてほしいと松嶋さんは語る。
「エレクトリックバイオリンによって、わくわくするような新しい音楽やパフォーマンスが生まれてほしいです。今は自分の演奏や作品をSNSで気軽に発表できますので、いろんな形でエレクトリックバイオリンを面白がっていただき、『私もバイオリンを弾いてみたい!』と思う方が増えてくれたらうれしいです」
ライブステージで大音量で弾けるだけでなく、自宅で静音で演奏もでき、メンテナンスの手間も少なく済むエレクトリックバイオリン。アコースティックバイオリンを弾いている奏者はもちろん、バンドに弦楽器を取り入れたい方、楽曲制作をしている方など、バイオリンという楽器に興味のある方は一度触れてみてはいかがだろうか。
アコースティックバイオリンの音と鳴りを再現するため、ボディの構造やブリッジの仕様を改良。
新しい技術・パーツを取り入れることで、操作性も上がっている。
アコースティックバイオリンのような音色から、エレクトリック(電気)を用いた音色まで多彩な表現が可能。音量調節が自在で、ライブ演奏だけでなく、自宅での練習や音楽制作にも幅広く使える。4弦仕様と5弦仕様があり、それぞれ 3色のカラー展開。
文/ 武田京子
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