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「GPAP over MoQ」の実証実験

遠隔地のアーティストとのコール&レスポンスが可能に!期待の技術「GPAP over MoQ」がライブ体験を変える

ライブの迫力や熱量までも伝わってくるような高臨場感と、低遅延・双方向のライブビューイングを可能にする新技術「GPAP over MoQ」をヤマハとNTTドコモビジネスが共同開発し、その実証実験が行われた。
音声や映像、照明などライブのデータを記録・保存するヤマハ独自の技術「GPAP」とNTTドコモビジネスの次世代メディア転送技術「MoQ」の連携によって開発されたこの新技術により、かつてなかったコミュニケーション型のライブビューイングが実現する。

コール&レスポンスもできる新しいライブビューイングの形

ヤマハは、「ライブの真空パック」をコンセプトに掲げ、アーティストの音声と等身大の映像、さらに照明などの演出にいたるまでライブやコンサートの体験をそのまま保存し、ステージで蘇らせる「Real Sound Viewing」や「Distance Viewing」を開発。一般的なライブビューイングとは一線を画す、臨場感あふれる高品質なライブの実証を重ねてきた。この画期的なシステムを支える技術のひとつが、「GPAP(General Purpose Audio Protocol)」だ。通常は音楽や映像、照明などそれぞれを別々のフォーマット上で記録し、同期させるという方法が一般的だが、「GPAP」はフォーマットが異なる音声、映像、照明などさまざまなデータをオーディオデータ(wav)の形式に統一して記録、再生できる。複雑な同期処理をおこなうことなく簡単にシンクロ再生でき、Cubaseなど市販のDAWで編集も可能。音楽の現場の知見と経験から生まれた、ヤマハならではの技術だ。
一方の「MoQ(Media over QUIC)」は、NTTドコモビジネスが2024年から開発・標準化を進めてきた音声や映像を配信するための次世代メディア転送技術。
このたび新たに開発した「GPAP over MoQ」、その最大のポイントは低遅延性だ。一般的に、インターネットを介して配信する際には約3秒の遅延が発生するが、それをなんと最短0.1秒にまで短縮できる。これは、スタジアムライブのアリーナ席から後方観客との距離感と同程度のものだという。
さらに、もうひとつの特長が双方向性。ライブ会場で収録した映像や音声、照明はクラウド配信サーバーを介してリモート会場に伝送され、同時にリモート会場からの情報もライブ会場に届けられる。これにより、違う場所にいながらにして一緒にライブを楽しんでいるかのような体験を味わうことができ、コール&レスポンスも可能に。ひとつのライブ会場と複数のリモート会場をつなぐこともできる。

技術的特長のイメージ図

技術的特長のイメージ図 

中継回線として5Gや公衆インターネットも利用可能

異業種の共創となる「GPAP over MoQ」誕生のきっかけは、NTTドコモビジネスがヤマハの「GPAP」に関心を寄せたことだった。
通信インフラを活用し、都市部と地域の二極化や、人材不足など日本が抱える課題の解消を目指すNTTドコモビジネス。すべての人に本物のライブの体験を届けることを目標に掲げるヤマハ。共通した未来を描いている両社だからこそ、共同開発はスピード感を持って進められた。

ヤマハの柘植秀幸さん(写真左)とNTTドコモビジネスの小松健作さん(写真右)。

記者会見で「GPAP」および「GPAP over MoQ」の説明をするヤマハの柘植秀幸さん(写真左)とNTTドコモビジネスの小松健作さん(写真右)。

ところで、「GPAP over MoQ」は単に「GPAP」を用いたライブ演奏や照明データなどを「MoQ」を使って配信するだけではない。注目すべきは、インターネットや5Gを使ったとしても、0.1秒のずれしか生じない転送を実現した点。ライブ会場は、安定した高度なネットワーク環境が整備された大規模な場所だけとは限らない。また、一般的に使われている5Gや公衆インターネットを中継回線にすると、0.1秒の低遅延で品質を保つことは困難になってしまう。そこで、映像・音声・照明などデータ種別に応じた最適な圧縮処理とデータ復旧処理を行うことで低遅延性と高い品質を両立させた独自の制御技術を開発。低コストでリアルタイムでの柔軟・多彩な映像通信を実現したことにより、たとえば今後は、交通事情などで会場に向かえなくなったアーティストが5Gを使って、迅速にライブイベントを開催することも可能になるだろう。
この技術は、NTTドコモビジネスにおいて2026年度中のサービス化・有償提供開始を目指しているという。

アーティストが移動する距離や時間を取り払う

この日のデモンストレーションは、シンガーソングライターの小林佳さんのミニライブで「GPAP over MoQ」を体感するというもの。メイン会場となるヤマハ銀座店地下2階のヤマハ銀座スタジオと地上6階のサテライト会場をつないで行われた。

「GPAP over MoQ」の実証実験

実証実験のイメージ図

メイン会場にいる小林さんの求めに応じてサテライト会場の観衆は手拍子を送ったり、一緒に声を合わせたり。離れた会場の反応が距離感をまったく感じさせないほどダイレクトに伝わり、ふたつの会場ながらひとつのライブのような体験が生まれるのには驚き!小林さんがサテライト会場の様子を映す大画面に向かって呼びかけると、聴衆からは大きな拍手が起こるなどスムーズなコール&レスポンスが実現した。

「GPAP over MoQ」の実証実験

「GPAP over MoQ」を使ったライブの実証実験。メイン会場(左)のアーティストのコールに対してサテライト会場内の観客のレスポンスがスムーズに行われた(右)。

会場のアーティストと配信先のオーディエンスがコミュニケーションできる、新しい体験を提供する「GPAP over MoQ」。今後、音楽業界にどのような変化をもたらすのだろうか。
「実は『Real Sound Viewing』や『Distance Viewing』を展開するなかで、アーティストの方からは双方向にできないかという声も上がっていました。アーティストにとってファンとのコミュニケーションは重要であり、遠隔地にいる観客とつながるというのはとても価値があることです。アーティストが移動する距離や時間を取り払うこともできるものだと思っています」
「GPAP」開発者であるヤマハの柘植秀幸さんにとって、新技術の実現は感慨深い。
「たとえばアメリカのBlue Noteのライブを遠隔地からリアルタイムで観て、拍手したら向こうもリアクションしてくれたら楽しいですよね」
加えて、この技術は「ライブの真空パック」の最終目的である「音楽を無形の文化財にする」ことにも寄与することになると話す。
「『GPAP over MoQ』で行ったライブを保存すれば、未来に遺す素材が増えることにもつながります」
さまざまな可能性が広がる「GPAP over MoQ」。エンタメ界や音楽シーンに、また新しい風が吹きそうだ。


NTTコミュニケーションズとヤマハが共同開発 高臨場、低遅延・双方向のライブビューイングを実現する独自技術「GPAP over MoQ」の実証実験

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※2025年7月1日、NTTコミュニケーションズ株式会社からNTTドコモビジネス株式会社に社名変更

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