Web音遊人(みゅーじん)

「音大卒」の戦い方

音大生、音大を目指す人に勇気と自信を与える実践的キャリアガイド『「音大卒」の戦い方』

2015年に出版され大反響を巻き起こした『「音大卒」は武器になる』の第二弾『「音大卒」の戦い方』の出版記念シンポジウムが開催された(2016年2月28日、ヤマハ銀座スタジオ)。「音大生の武器と戦い方」をテーマに、多彩な業界からシンポジストを招き、音大生の可能性や将来のために身につけるべきものなど、幅広い話題を取り上げた。

「音大卒業生は音楽関係の仕事に就くもの」。そんな固定概念に一石を投じた『「音大卒」は武器になる』(著者インタビューはこちら)。本書に共感し当日の会場を埋め尽くした参加者は、現役音大生、音大や音楽教室の指導者、保護者など。本がもたらした反響の大きさを示すように、会場は熱気に包まれた。
まず2冊の著者、大内孝夫氏(元みずほ銀行いわき支店長、現在武蔵野音楽大学勤務)が出版の経緯と本に託す思いを講演。「音大生は真摯に音楽に向き合い、日々努力している。コミュニケーション能力に長け、礼儀や時間を守るマナーを身につけ、叱られてもめげない精神力をもっている。その努力が報われるために、自己変革をしながら後悔のない人生を勝ち取ってほしい」と述べた。

「音大卒」の戦い方

写真左より、司会を務めた山浦直宏氏(トランスコスモス株式会社首席コンサルタント)、著者の大内孝夫氏、福田成康氏(一般社団法人 全日本ピアノ指導者協会(PTNA)専務理事)、樹原涼子氏(作曲家/ピアニスト。今年25周年を迎える「ピアノランド」メソッド創始者)、堀健一氏(三井物産株式会社執行役員)、田邊綾乃氏(全日本空輸株式会社客室乗務職採用担当)

続くシンポジウムでは、音楽関係者から一般企業の人事担当者など、各界で活躍中の出演者に著者が加わりそれぞれの立場から「音大生の強み」と「今後の展望」を語った。
三井物産株式会社の堀氏は「これからの企業人に求められるのは幅広い教養やグローバルな感覚。音大のカリキュラムはその宝庫」と述べ、その視点から「音大生、音大卒の人にはアドバンテージがある。ひとつのことを頑張った人、1本筋の通った価値体験をもった人は仕事もうまくいく。音大生にはぜひ、より幅広い教養を身につけてほしい」と語った。そして「音大卒は武器になる」説に「大賛成」とエールを贈った。

また、全日本空輸株式会社の田邊氏は、自身も合唱団で活動し、音域という生まれもった適性を知って、「自分は他者にはなれない」「自分にしかできない強みがある」ことを体験的に学んだという。採用する企業側の立場から「今、企業が求めているのはまさにリベラルアーツ、教養です。世界で戦うために必要なのはグローバルな教養です」と音楽を学ぶ意味を語った。
司会のトランスコスモス株式会社の山浦氏は「音大生は音楽と向き合い深堀りの力を磨いている」と指摘。さらに「今の若い人たちはインターネットのある時代に生まれ育ったデジタルネイティブ世代。深堀り力に幅広さが加われば、もっと強くなる」と体験も交えて語った。

これまで2万枚近い履歴書を見て約2,000人の学生と面接をしてきたという一般社団法人全日本ピアノ指導者協会の福田氏は、音大生を採用する立場から「音大出身者はとても優秀な人材」と語り、「ピアノの指導者としての多様なキャリアの築き方」を紹介。同時に「ピアノを習う人は増加傾向にあり、10年後にはピアノ指導者不足が顕在化するかもしれない」という、他では知り得ない情報も提供した。
作曲家/ピアニストの樹原氏は音大在学中から「音楽で生きていくことを早い時期から考えていた」と語り、「自分の人生の決定権は自分。自分で考え、情報を得て、行動に移してほしい」と呼びかけた。音楽家としての「音楽を愛する気持ちを大事に」という言葉に力を込めた。

それぞれの専門的な視点からの説得力ある話が、音大生をはじめ音楽業界に関わる人全体に大いなる希望と自信、そしてビジョンを与えた。大内氏の新刊もまた、新たな人材発掘の契機となることを予感させた。なぜ「音大生が企業人として優れているか」は、大内氏の著書の分析を読んでほしい。

■作品紹介

『「音大卒」の戦い方』
著者:大内 孝夫
発売元:ヤマハミュージックメディア
発売日:2015年12月17日発売
価格:1,600円(税抜)
詳細、ご購入はヤマハミュージックメディア本書のページをご覧ください。

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