Web音遊人(みゅーじん)

東儀秀樹インタビュー - Web音遊人

今月の音遊人:東儀秀樹さん 「“音で遊ぶ人”といえば僕のことでしょう。どのような楽器の演奏でも、楽しむことだけは忘れません」

雅楽に新しい光を当て、篳篥(ひちりき)や笙(しょう)といった伝統楽器で多彩なジャンルの音楽を演奏している東儀秀樹さん。音楽はもちろん、多様な趣味もすべて楽しみ尽くすという達人は、常に「ワクワクと好奇心」を忘れないという。新感覚の音楽が生まれる背景や人柄とは……?

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

これは、僕にとって一番難しい質問ですね。あまりにたくさんあり過ぎるし、おそらく挙げたくなるどの曲も同じくらい聴いているでしょうから。1曲を挙げてしまうと、他の曲に申し訳ないという気持ちになってしまいますし、どうしても難しいですね。音楽に限らず、なにかをひとつ選ぶということ自体が得意ではありません。ですから、この回答については許してください。
自分のオフィシャルサイトにあるバイオグラフィにも、これまで愛聴してきたアルバムを掲載していますが、たとえばエリック・クラプトンが好きであってもアルバムの曲を全部好きなわけではないですし、今日はこのアルバムがいいと思うけれど、明日になれば「いや、やっぱりこっちだ」という具合に変わってしまうのです。
ただ、そういった自分だからこそ好奇心のおもむくまま、ジャンルを問わず新しい音楽との出会いが生まれるでしょうし、趣味や生活が広がっていくような気はします。

Q2.東儀さんにとって「音」や「音楽」とは?

僕は本当に幸せで恵まれた人間だなと思うことがあり、それは音楽も含めてすべての仕事が趣味の延長だなと思えるからなのです。常に楽しみながら仕事をしていますし、アルバムを作るときにはそのときどきに感じている「自分の中の旬」を音楽という形にして送り出していますので、たとえ仕事であっても嫌いなことをあえてするというのはありません。
音楽が自分にとってどういう存在なのかも、これまで意識することは特になかったですし、ことさら意識をしてしまうと「こう作ろうか、どうしようか」と考えすぎてしまい、あざとくなってしまうような気がするのです。ですから、いつも自分のそばにあって存在を意識しすぎないという点では「空気」のようなものかもしれません。
音楽家としても本来は雅楽の演奏者ですが、アルバムではギターやキーボードなども含め、ほとんどの楽器を自分で演奏していますので、肩書きを付けるのであれば「雅楽師(マルチプレイヤー)」という表記がしっくりきます。俳優や作家、絵本作家などの仕事も楽しんでいますし、もしかすると音楽もメインではなく、僕の中の一部という存在なのかもしれませんね。

東儀秀樹インタビュー - Web音遊人

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人をイメージしますか?

「音で遊ぶ人」といえば、自分自身のことしか思いつきません。ジャンルにこだわりなく、面白いと思った音楽は心から楽しみますし、演奏する楽器も篳篥や笙などの雅楽器だけではなく、チェロも弾きますし、民族楽器などは博物館が開けるくらいありますが、どれも演奏していて楽しいものばかりです。
うちは両親とも音楽が好きで、自宅ではクラシックや映画音楽、ミュージカルなどの曲が流れていましたし、小・中学生の頃は海外で生活していたためインターナショナル・スクールに通っていましたから、ビートルズをはじめとする海外のポップス、反戦フォーク、ロック、ブルースなどさまざまなジャンルの音楽に次々と出会えました。当時の自分には雅楽の「が」の字もありませんでしたけれど、そうした環境があったからこそ、現在のような音楽との付き合い方ができるのでしょう。
いま小学生の息子は僕の影響で、幼稚園の頃から1970年代のロックに興味をもっているのですが、そうした音楽環境といい、好き嫌いがはっきりしているところといい、僕と同じようになるかもしれませんね。

東儀秀樹〔とうぎ・ひでき〕
雅楽師。奈良時代から今日まで1,300年にわたり雅楽を世襲してきた楽家に生まれる。宮内庁楽部在籍中は、篳篥を主に、琵琶、太鼓類、歌、舞、チェロを担当。宮中儀式や皇居で行われる雅楽演奏会などに出演するほか、海外での公演にも参加、日本の伝統文化の紹介と国際親善の役割の一翼を担ってきた。1996年デビューアルバム『東儀秀樹』で脚光を浴び、その後次々とアルバムを発表。日本レコード大賞企画賞、ゴールドディスク大賞など受賞歴多数。現在はさまざまなジャンルとコラボレーションし、雅楽の持ち味を生かした独自の創作や表現に挑戦している。
東儀秀樹オフィシャルサイト  http://www.togihideki.net/

 

特集

前橋汀子

今月の音遊人

今月の音遊人:前橋汀子さん「同じ曲を何千回、何万回演奏しても、つねに新しい発見や見え方があるのです」

2673views

音楽ライターの眼

連載5[多様性とジャズ]“スキャットの誕生”に見え隠れするジャズが求めた多様性

2170views

マーチング

楽器探訪 Anothertake

見て、聴いて、楽しいマーチング

15566views

サクソフォンの選び方と扱い方について

楽器のあれこれQ&A

これからはじめる方必見!サクソフォンの選び方と扱い方について

55649views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

11153views

オトノ仕事人

音楽をやりたい子どもたちの力になりたい/地域音楽コーディネーターの仕事

8746views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

6682views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

3023views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

19415views

われら音遊人:1年がかりでビッグバンドを結成、河内からラテンの楽しさを発信!

われら音遊人

われら音遊人:1年がかりでビッグバンドを結成、河内からラテンの楽しさを発信!

10762views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

クラス分けもまた楽しみ、レッスン通いスタート

4749views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9903views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

10092views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

9999views

音楽ライターの眼

「学習」から最も遠い場所にいると思っていたジャズがAIに向いていた?

2773views

オトノ仕事人

深く豊かなクラシックの世界への入り口を作る/音楽ジャーナリストの仕事

4368views

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

われら音遊人

われら音遊人:バンド経験ゼロの主婦が集合 家庭を守り、ステージではじける!

8638views

“音を使って音楽を作る”音楽の冒険を「ELC-02」で

楽器探訪 Anothertake

音楽を楽しむ気持ちに届ける「ELC-02」のデザインと機能

8465views

しらかわホール

ホール自慢を聞きましょう

豊潤な響きと贅沢な空間が多くの人を魅了する/三井住友海上しらかわホール

13556views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5402views

トロンボーン

楽器のあれこれQ&A

初心者なら知っておきたい、トロンボーンの種類や選び方のポイント

13212views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10675views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25065views