Web音遊人(みゅーじん)

DOWNLOAD JAPAN 2019

DOWNLOAD JAPAN 2019はスレイヤー最後の日本メタル・フェス出演となるか

2019年3月21日(木・祝)、“DOWNLOAD JAPAN 2019”が千葉・幕張メッセ国際展示場9~11で開催される。

イギリスを代表する夏フェスのひとつ“ダウンロード・フェスティバル”が日本初上陸という話題性もさながら、オジー・オズボーン、スレイヤー、アンスラックス、アーチ・エネミー、サム41といった豪華ラインナップが出演するメガ・イベントということで、空前の盛り上がりを見せている。

“ダウンロード”は2003年にイギリスで開始したハード&ヘヴィ系ロック・フェスだ。同じドニントン・パークで開催されてきた“モンスターズ・オブ・ロック”の後継フェスという性質を持ち備え、世界のトップ・バンドからカルト的支持を誇るアンダーグラウンド・アーティスト、百戦錬磨のベテランから若手のブライテスト・ホープまでが出演してきた。ブラック・サバスやアイアン・メイデン、メタリカ、ガンズ&ローゼズ、スリップノットなど、“ダウンロード”は毎年最強のロック・スペクタクルを観衆に提供している。

イギリス単独から世界へと舞台を広げ、フランス、スペイン、オーストラリアでも開催されてきた“ダウンロード”が2019年、遂に日本への進出が決定したのである。

DOWNLOAD JAPAN 2019

日本のロック・フェス史における新章となる第1回“DOWNLOAD JAPAN”だが、メインの2アーティストがこれで見納めになってしまう可能性もはらんでいる。

ヘッドライナーのオジー・オズボーンのライヴには“NO MORE TOURS 2”と副題が付けられているが、これは彼が1992年に行った引退ツアー“NO MORE TOURS”にちなんだものだ。そのときは引退を撤回したものの、今回はオジーも70歳。“ヘヴィ・メタルの帝王”の勇姿を日本で見ることができるのは、これが最後になるかもしれない。

DOWNLOAD JAPAN 2019

そしてスレイヤーである。彼らはこれが最後のワールド・ツアーだと宣言しており、フェスの告知にも“FINAL WORLD TOUR”と記されている。スラッシュ・メタルの“BIG 4”の一角を占める彼らが日本のメタル・フェスに参戦するのもこれが最後か……?と考えると、万感胸に迫るものがある。

スレイヤーは日本のメタル・フェスの重鎮といえる存在であり続けた。2001年・2002年に行われた“BEAST FEAST”フェスでヘッドライナーを2年連続務めた彼らは、“LOUD PARK”でも2006年、2009年、2012年、2015年、2017年と、ほぼセミ・レギュラーとしてメイン出演している。

何故スレイヤーはこれほどまでに日本のメタル・フェスに出演してきたか。それはまず、彼らの音楽が優れているからであることは言うまでもない。『レイン・イン・ブラッド』(1986)を筆頭に、ヘヴィ・メタルというジャンルを代表する名盤の数々を生んできた。

さらにスレイヤーは常にファンの信頼を勝ち得てきたバンドだ。メタル・バンドはしばしばメインストリームの“売れセン”に転んだり、“実験的”なことをやってみたりするものだが、彼らは脇目も振らず、ヘヴィでエクストリームな路線を突き進んできた。

また、スレイヤーはコスト・パフォーマンスが良いバンドでもある。海外のメタル・フェスには7万人から10万人を動員するものがあるのに対し、日本国内では2日間で2万から3万人と、どうしても規模が小さくなってしまう。そのためメタリカのようなギャラの高いバンドをフェスに迎えるのは難しかったりする。人気があって“格”も申し分なく、ギャラが高すぎず、観衆に100パーセント以上の満足を与えるスレイヤーは、まさに理想的なヘッドライナーなのだ。

“DOWNLOAD JAPAN 2019”でのスレイヤー来日ライヴは“FINAL WORLD TOUR”と銘打たれているが、”最後の日本公演”と決まったわけではなく、もしかして地球を一周してもう一度日本に戻ってくる可能性もある。ただ今後、日本で彼らのステージを見られる機会がきわめて少ないことは確実であり、今回のライヴは“必見”の2文字に集約できるだろう。

新しいメタル・フェスの始まりが、偉大なるアーティストの旅路の終わりとなるか。 “DOWNLOAD JAPAN 2019”は日本のメタル史上の一大ターニング・ポイントとなる。

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に850以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
ブログインタビューリスト

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:Crystal Kayさん「音楽がなかったら世界は滅びてしまうというくらい、本当に欠かせない存在です」

2112views

音楽ライターの眼

異次元を疾走する山中千尋が結びつけたクラシックとジャズ

3589views

豊かで自然な音と響きを再現するサイレントバイオリン「YSV104」

楽器探訪 Anothertake

アコースティックの豊かで自然な音色に極限まで迫る、サイレントバイオリン™「YSV104」

11598views

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

23104views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11317views

オトノ仕事人 ボイストレーナー

オトノ仕事人

思い描く声が出せたときの感動を分かち合いたい/ボイストレーナーの仕事(後編)

8948views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

20244views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10452views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

29754views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブルを大切に奏でる皆が歌って踊れるハードロック!

4673views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

5316views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24738views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目のピアノデュオ鍵盤男子の二人がチェロに挑戦!

8072views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

10989views

エース・フレーリー

音楽ライターの眼

2018年9月、エース・フレーリーが来日。キッスの名曲オンパレードとなるか

14183views

オトノ仕事人

深く豊かなクラシックの世界への入り口を作る/音楽ジャーナリストの仕事

4231views

われら音遊人

われら音遊人:路上イベントで演奏を楽しみ地域活性にも貢献

2974views

reface

楽器探訪 Anothertake

個性が異なる4機種の特徴、その楽しみ方とは?

7273views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

8055views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

7591views

楽器のあれこれQ&A

ドの音が出ない!?リコーダーを上手に吹くためのアドバイスとお手入れ方法

175892views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5201views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24738views