今月の音遊人
今月の音遊人:葉加瀬太郎さん「音楽は自分にとって《究極のひまつぶし》。それは、この世の中でいちばん面白いことだから」
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新しい音楽の楽しみ方として注目されているネットワークオーディオ。言葉を耳にしたことはあるけれど、よくわからない……という方も多いのではないでしょうか。
ネットワークオーディオとは、その名の通りインターネットなどのネットワークを利用し、音楽ファイルの再生を行う新しいオーディオのスタイル。iTunesなどの音楽データダウンロードサービスを利用して、スマートフォンで聴くスタイルは今や一般的ですが、その一歩先を進んだものだと考えていいでしょう。
必要なのは、ルーター(*1)とNAS(*2)またはパソコンなどデータが保存できるもの、そしてネットワークプレーヤー(後述)の機能を備えた機器。パソコンなどにダウンロードした音源をNASなどに保存し、ネットワークプレーヤーを使って再生するのが一般的です。
ところで、ネットワークオーディオとセットになって登場する言葉のひとつに、前述のネットワークプレーヤーがあります。
プレーヤーというと形があるものを想像しますが、実はこれはネットワークオーディオのための機能のひとつ。ダウンロードした音楽データを音楽として聴くためには、DAコンバーター(*3)でデジタルデータをアナログに変換する必要があります。データには、さまざまなファイル形式がありますが、それらを受け取って判別し、いったんプールしてDAコンバーターが読み取れる形式に変えるのがネットワークプレーヤーの役割です。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は無意識のうちに使っているかもしれません。たとえば、スマートフォンもネットワークプレーヤーの機能を搭載しています。ただし、取り込めるフォーマットは、CD収録音からの劣化を伴うMP3(*4)やAAC(*5)だけです。
ネットワークオーディオの特長のひとつは、CDを超える高音質が楽しめることです。ネットワークの世界では、CD以上の品質でマスタリングされたハイレゾ音源も配信されています。
CDに音楽データを収録できる容量、いわば“器”の大きさは、サンプリング周波数(*6)/量子化(*7)が44.1kHz/16bitと決まっていますが、ネットワークオーディオの登場によって、その“器”は取り除かれることになりました。今では、384 kHz/32bitなどCDより多くの情報を記録できるようになっています。情報量が増えることで、音楽配信サービスなどで入手したマスター音源に近い音を家庭で楽しめるようになったのです。
最近では、ハイレゾ対応の携帯音楽プレーヤーも登場していますが、ヘッドホンやイヤホンで音楽を聴いた場合、頭の真ん中に音が集まって来るように感じる「頭内定位」という傾向が見られます。録音された空間の大きさを立体的に感じさせてくれる音場感は、ハイレゾの醍醐味。それを可能にするのがネットワークオーディオです。スピーカーで聴くことで、あたかも自分自身が収録マイクになったような極上の感覚をぜひ味わってほしいものです。
また、1台のNASに膨大な数の曲を保存するため、CDのように保管場所を取らないのもメリット。CDの音源をNASにリッピング(*8)して再生すれば、CDの回転音が一切聴こえず、音楽だけを楽しむこともできます。
さらに、CDの場合はアルバム単位で音楽を聴いていたのに対し、いろいろな選曲が簡単にできるネットワークオーディオでは曲単位へ。音楽の聴き方も変わります。
2007年、スコットランドのオーディオメーカーLINNがネットワークオーディオ機器を日本で初めて発売した際、その価格は100万円を超えるものでした。今では日本のメーカーでもコストダウンがかなり進み、ネットワークプレーヤー機能を内蔵した機器もたくさん登場しています。新しい音楽の楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか。
(*1)ルーター:パソコンなどをインターネットに接続するための機器。パソコンやNASなどを複数台接続することによりネットワークが形成できる。
(*2)NAS:ルーターに接続できるハードディスクドライブ。同じネットワーク上にあるパソコンやスマホなどとデータ共有ができる。
(*3)DAコンバーター:デジタル信号をアナログ信号に変換するもの。
(*4)MP3:MPEG-1 Audio Layer-3の略。圧縮された音声ファイルフォーマットのひとつ。音声データを10分の1程度に圧縮できる。
(*5)AAC:Advanced Audio Codingの略。圧縮された音声ファイルフォーマットのひとつ。MP3より1.4倍ほど圧縮率が高いといわれている。
(*6)サンプリング周波数:アナログ信号からデジタル信号への変換処理を1秒間に何回行うかを表す数値で、数字が大きいほどより高い周波数まで記録出来る。※CDは44.1kHzで1秒間に4万4100回のデータを変換処理している。
(*7)量子化:オーディオ信号の音の大小(ダイナミックレンジ)を記録するための器の大きさを表す。16bitの場合96dBまでのダイナミックレンジが記録できる。
(*8)リッピング:ディスクに記録されているデータを、音楽ファイルとしてパソコンに取り込むこと。