若き精鋭ふたりに、耳も目もぐいぐい引き込まれる/三浦文彰&ヨナタン・ローゼマン デュオ・リサイタル

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音楽ライターの眼
若き精鋭ふたりに、耳も目もぐいぐい引き込まれる/三浦文彰&ヨナタン・ローゼマン デュオ・リサイタル

若き精鋭、三浦文彰(バイオリン)とヨナタン・ローゼマン(チェロ)のデュオ・リサイタル。敬愛する友人同士で、二重奏だけでなくそれぞれ独奏も披露すると聞き、楽しみに出かけた。

オープニングの三浦のソロは、歌劇『水車屋の娘』の二重唱をパガニーニが無伴奏曲に編曲したもの。高速パッセージはもとより、弓を弦で弾ませたり、弦圧を変えての強弱など、高度な技法満載の難曲だ。とりわけ、弦を指ではじくピチカートはバリエーション豊かで、左指で弦をはじきつつ弓でも奏でたり、弓で和音を弾きながら両手指でピチカートしたり……。まるで左右の手が会話しているかのように見えるシーンが何度もあり、これぞ眼福。原曲が恋人同士の二重唱だけに、パガニーニは視覚的効果も考えて編曲したに違いない。「バイオリンの魔術師」ならではの仕掛けを、三浦は真摯に奏で、拍手万雷のスタートとなった。

変わって、ローゼマンのソロは、カサドの『無伴奏チェロ組曲』から第3楽章。哀愁をたたえた流麗な曲をおおらかに表現する柔らかなボウイングで、カサドの故郷・スペインのカタロニア民族舞曲風の旋律をたっぷりと奏でた。また、重低音をリズミカルに弾いたり、あたかもギターのような響きで弦をボロロンと右手指ではじいたり、効果的手法を盛り込んだ楽曲を、目と耳の両方に届けるかのように精一杯表現していた。

以降は二重奏。ふたりの好きな曲を選んだそうで、どれも息の合った演奏だった。

グリエールの二重奏曲は、旋律と伴奏を交互に受け持ったり、呼応し合ったり。日常の風景を連想する分かりやすい曲だが、聴衆を二重奏の世界へ導く序奏的役割をうまく果たしていたと思う。続くラヴェルの二重奏曲が「バイオリンとチェロの対抗戦」のような音楽だけに、ためらいなくぶつかり合える環境を作っておきたかったのだなと感じた。

ラヴェルのそれは、性格の異なる2つの音楽が同時に鳴り始め、偶発的瞬間に和音が響くような印象を受ける曲だが、実はバイオリンの旋律にチェロが応えていたり、役割が逆になったり。また、ピチカートで呼応し合ったり、フレーズの1音を強調しながら、交互に奏でたり……。最後まで実験的要素満載で、緊張感たっぷりのとんがった音楽なのである。時折やんちゃな視線を交わしつつ、ふたりは黙々と弾ききり、満足気だった。

この流れで、休憩後には「浸って聴ける」曲が2つ続き、観客はきっと満足したと思う。プログラム変更で、最初の曲は、ヨハン・ハルヴォルセンの『パッサカリア ト短調』 に。ヘンデルの『組曲第7番 ト短調』の第6曲を編曲したもので、旋律のバトンタッチ、奥行きのある豊かな重音、小気味よいリズム変化など起伏に富み、相互の絡みも絶妙だった。

続く、コダーイの二重奏曲では、ハンガリー音階を生かしたメランコリックな旋律に、ぐいぐい引き込まれていった。バイオリンのハイトーンがゆらぎを醸し、チェロの力強い低音やロングトーンがうなり、独特の響きで場内を満たした。

ふたりとも、日々のチャレンジに夢中な20代。伸び盛りのピュアな心意気に惜しみない拍手が続いた。

アンコールも気が利いていた。シベリウスの『水滴』は、ピチカートを生かした心地よい小品。さっぱりしたデザートをいただいた気分で、心も軽く帰路に着いた。

 

原納暢子〔はらのう・のぶこ〕
音楽ジャーナリスト・評論家。奈良女子大学卒業後、新聞社の音楽記者、放送記者をふりだしに「人の心が豊かになる音楽情報」や「文化の底上げにつながる評論」を企画取材、執筆編集し、新聞、雑誌、Web、放送などで発信。近年は演奏会やレクチャーコンサート、音楽旅行のプロデュースも。書籍『200DVD 映像で聴くクラシック』『200CD クラシック音楽の聴き方上手』、佐藤しのぶアートグラビア「OPERA ALBUM」ほか。
Lucie 原納暢子

 

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文/ 原納暢子
photo/ Ayumi Kakamu