今月の音遊人
今月の音遊人:大西順子さん「ライブでは、練習で考えたことも悩んだことも全部捨てて自分を解放しています」
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ギター経験者が「弾いてみたい!」という誘惑にかられるアルバムは、快適サウンドの詰め合わせ/ゴンチチ『Assortment』
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2020.5.21
tagged: アルバムレビュー, ゴンチチ, GONTITI, アソートメント, Assortment
テレビや映画、ラジオなどを日常的に楽しんでいる方であれば、(意識するしないは別としても)ゴンチチの曲を必ず聴いているだろう。1978年に結成されたこのアコースティックギターデュオは、音楽業界人の間で話題となった後に1983年になるとレコードデビュー。あまりにも気持ちの良いサウンドと関西弁を繰り出す二人のキャラクター(そのギャップたるや!)で人気を集め、癒し系音楽ブームをリードしたアルバムシリーズ『イマージュ(image)』でも常連となった。
基本的にはゴンザレス三上がメロディを、チチ松村がコードワークを軸とした伴奏パートを担当するが、もちろん主従ではなく両者の音楽が対等に絡み合い、「合わせ技で1本」という関係性によって唯一無二の音楽が生まれているのだ。2018年にはデビュー40周年を祝ったが、ゴンチチ・サウンドは変わらずに瑞々しく、私たちに「音の楽園」へのパスポートを提示してくれる。『アソートメント(Assortment=品揃え、各種取りそろえ、詰め合わせ、などの意味)』と題された最新アルバムもまた、心も身体も脳もすべてを解放してくれる一枚だ。
アルバムがスタートすると、聞こえてくるのは端正な音の連続による可愛らしい音楽。ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲の『ゴルドベルク変奏曲』から第18変奏、つまりクラシックの名曲である。しかしゴンチチの2人は、まるで素敵な物語が始まるような雰囲気を作り出してくれ、音楽にジャンルは関係ないということをあらためて教えてくれる。
シンプルなワルツナンバーの『君と住む街で』、ポカポカした休日の陽だまりのような『Floating Bell』、ギターをウクレレに持ち替えて奏でる『思い出すこと』など、実にゴンチチらしい音楽が次々と流れてくるこのアルバムは、長く愛聴している方にも初めて彼らのアルバムを聴く方にも平等にピースフルな時間をプレゼントしてくれるだろう。子どもの頃の夏休みを思い出すようなノスタルジーや、のんびりとバスにでも揺られて旅をしているような雰囲気、さらには夕暮れ時に帰宅する風景を慈しむような気分など、ゴンチチの音楽が提示してくれるものは本当に多種多彩だ。
ゴンチチの魅力はいろいろあるが「ピュアでシンプル」であるがゆえに、ギターを弾いている方にとっては「ちょっと練習すれば自分も弾けるのではないか」と感じられ、心を許してしまう曲が多いことだ。もちろんシンプルに聞こえて実は凝ったコードワークである曲や、ゴンザレス三上の超絶技巧が炸裂する曲もあるのだが、それでも「君(たち)だってゴンチチになれるよ」とばかりに誘惑の手を差し伸べてくる曲がたくさんある。それゆえ、若い世代ばかりではなく大人になってからギターを始めた方たちにとっても、よき目標、よきお手本になるはず。『アソートメント』にはそういった曲が、洒落たショーケースの中で買い手を待つスイーツのように並んでいるのだ。
ついでながらもうひとつだけ。このアルバムは11トラックで約26分。「もっと聴きたい、ちょっともの足りない」と感じた方は、なじみ深い曲満載の『オールタイム・ベスト』や40周年記念盤『we are here』などもご一聴を!
GONTITI 「Goldberg Variations, BWV 988 – Var. 18: Canone Alla Sesta」Music Video
GONTITI 『Assortment』
発売元:ソニー・ミュージックエンタテインメント
発売日:2019年12月25日
価格:2,500円(税抜)
GONTITI オフィシャルサイト
文/ オヤマダアツシ
photo/ 坂本ようこ
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