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今月の音遊人:菅野祐悟さん「音楽は、自分が美しいと思うものを作り上げるために必要なもの」
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超絶技巧の先にある音楽の世界を聴いてほしい/リサイタルシリーズ「魔弾のピアニストvol.1 頂に向かって…」若林顕インタビュー
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2023.4.19
日本を代表するヴィルトゥオーゾとして活躍しているピアニストの若林顕。2022年8月から2023年1月まで、全国7都市で開催された“ヤマハNew CFXコンサートツアー 2022~若林顕とCFXが響き合う、新しい音の世界~ ”では、ヤマハのフラグシップモデルであるコンサートグランドピアノ「CFX」新モデルの魅力を多彩なプログラムで楽しませてくれた。
今回は、2023年5月20日(土)に東京芸術劇場で開催される新たなリサイタルシリーズに向けての想いなどを聞いた。
東京藝術大学附属高校を卒業後、ヨーロッパに渡り、20歳でブゾーニ国際ピアノコンクール第2位、22歳でエリザベート王妃国際音楽コンクール第2位という快挙を成し遂げ、ピアニストとしてのキャリアをスタートさせた若林顕。30年以上の年月を経て、磨き抜かれたピアニズムで巨匠への道を歩み続けている。
「コンクールは運ですね。でも、その頃から漠然と本物を志向する気持ちがあって、レパートリーを広げ、室内楽をたくさん経験し、40歳から本当のスタート地点に立てる演奏家になりたいと考えていました。僕は昔の演奏家が好きなんですが、ルービンシュタイン、リヒテル、コルトー、ホロヴィッツなどは数秒聴いただけで、どんなピアニストなのか、どんな人生を送ってきたのかがわかります。音楽というのは、何もかも包み隠さず出てしまう。私は今、50代後半ですが、60代、70代になったとき、どこまで理想に近づくことができるのか、日々の積み重ねが大切だと考えています」
2022年3月に発表されたヤマハの「CFX」新モデルのお披露目のリサイタルツアーでは、さまざまな作曲家の音楽世界を鮮烈に描き分けて楽しませてくれた。
「なるべくいろいろなタイプの音色や響きを楽しんでいただきたいと考え、ラフマニノフ、ショパン、ドビュッシー、ストラヴィンスキーの作品を中心に魅力的な小品を組み合わせ、3種類のプログラムを聴いていただきました。新しいCFXは、表現がダイレクトに伝わる凄いパワーを持った楽器で、弾き手の気持ちに応えて柔軟に変化するので、鍵盤を通して楽器が自分の身体の一部のように感じられました。2022年11月、妻でバイオリニストの鈴木理恵子とのデュオ・リサイタルでも使わせていただきましたが、室内楽の精妙な表現にも合っていて、無限の可能性を感じました」
2023年5月20日(土)に東京芸術劇場コンサートホールで開催するリサイタルシリーズ“魔弾のピアニストvol.1 頂に向かって…”でも、こよなく愛するCFXを演奏する。
「今の自分の感性に合った作品を聴いていただきたいと考えたプログラムです。前半では、演奏される機会の少ないラフマニノフ『ピアノ・ソナタ第1番』を取り上げます。何か宿命のようなものを感じさせるドラマティックな作品で、その前に演奏するメトネル『忘れられたメロディーより「回想ソナタ」』にも通じるものがあります。走馬灯のように人生を振り返りながら、激しい場面があったり、夢のような世界が広がったり、メランコリックな情緒に満ちています。
後半は、ドビュッシー『映像第2集』、ショパン『バラード第4番』、ストラヴィンスキー『ペトルーシュカからの3楽章』。ドビュッシーは、CFXの美点がことさら活きる作品です。キラキラした高音と鐘のような低音をブレンドして、幻想的な世界を描き出したいと思います。ショパンの最高傑作のひとつ『バラード第4番』には、苦悩の中に見える重い光、荘厳な祈りのようなものを感じます。『ペトルーシュカ』では、華やかな色彩感とエネルギーのなかに、人間に命を吹き込まれながら踏みにじられるお人形の哀しみ、パラドックスのような心理描写を表現できればいいなと考えています」
まさに“魔弾のピアニスト”にふさわしいヴィルトゥオージティあふれるプログラムだ。
「たしかにラフマニノフやストラヴィンスキーなど、技巧的に難易度の高い作品ですが、テクニックというより、音楽のイメージ、色合い、ファンタジーを世界観満載にお届けしたいと思います」
日時:2023年5月20日(土)14:00開演
会場:東京芸術劇場コンサートホール(東京都豊島区)
曲目:メトネル/忘れられた調べ 第1集 Op. 38 – 第1曲 回想ソナタ、ラフマニノフ/ピアノ・ソナタ 第1番 ニ短調Op. 28、ドビュッシー/映像 第2集、ショパン/バラード 第4番 へ短調 Op. 52、ストラヴィンスキー/ペトルーシュカからの3楽章
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文/ 森岡葉
photo/ 2022年ヤマハホール公演の様子(一枚目)
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