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かつてない展開に魅了される『カルメン 情熱の恋』/藤井泰子・清水のりこインタビュー
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2023.12.19
世界中で人気オペラの筆頭に挙げられる『カルメン』。躍動的な前奏曲とともに、多くの人に愛されているオペラである。
男たちを翻弄するカルメンは悪女なのか、それとも意志の強い自立した女性なのか。カルメン像は時代や社会の変化とともに、さまざまな見方が存在している。そんな魅力あふれる『カルメン』を一つの事件として捉え、検証してみるのが、2024年2月21日にヤマハホールで行われる『カルメン 情熱の恋 〜3つの視点から検証するカルメン事件〜』である。本作にカルメン役で出演する藤井泰子と、音楽を担当する清水のりこに話を聞いた。
藤井は日本、イタリアで声楽を学んだ後、2010年にマグダ・オリヴェーロ 国際声楽コンクールで優勝。『蝶々夫人』でヨーロッパデビュー以来、数々のオペラや交響楽の国際舞台で主演している。現在はイタリアに在住し、主要TV局で音楽番組やクイズ番組、ドラマ、映画にも出演。Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人100」に選出された人気ソプラノである。
実は藤井がオペラ歌手を目指すきっかけになったのが、『カルメン』であった。「母の運転する車の中で流れていたマリア・カラスの『カルメン』を聴いて、そのドラマティックな表現にたちまち魅了されたんです。私が8歳の時でした」(藤井)
楽しみなのはカルメンの見せ場でもある『ハバネラ』だ。今回、藤井のカルメン像はどのように表現されるのだろうか。
「カルメンは自分らしさを大事に生きる、内面の成熟した女性。生まれも育ちも全く違うホセにはカルメンの心変わりが受け入れられず事件に至ってしまいます。死を突きつけられても自分の意志を最後まで貫くカルメンは私にとって、ぎゅっと人間味の詰まった愛すべき英雄なんです。ですが、演出によって解釈も変わりますし、見る人によってもさまざまですよね。今回の新演出は“3つの視点からの検証”ということで、新たな発見とともにまた違ったカルメンの魅力をお届けできると思います」(藤井)
今回の音楽はオーケストラではなく、クラシックのエレクトーン演奏家である清水のりこが担当する。使用するのはカスタムモデルELS-02C。オーケストラとは異なる、独自の音響が生み出す臨場感が、『カルメン 情熱の恋』の音楽世界をより華やかに彩ってくれるはずである。
清水のりこは、2013年の『カルメン』から始まり現在まで数々の演目を上演しているオペラシリーズ『銀座オペラ』 など、1台のエレクトーン伴奏によるオペラ、協奏曲、他ジャンルとのコラボレーション等を国内外で数々手がけてきた。
「『カルメン』はどこをとっても名曲ですし、何度演奏してもそのたびに新たな学びがあるので、楽しみしかありません。早く稽古を始めたいですね」(清水)
そんな清水の演奏に衝撃を受けたのが、共演する藤井である。
「のりこさんの演奏との出会いは、オペラガラコンサートを初めて拝見した時です。作品の解釈がとても素晴らしく、いつか共演できたらと思っていたのですが、先日実現したんです。今回は二度目の共演となりますが、とても楽しみにしています」(藤井)
今回の作品がヤマハホールで上演されるところも、一つの見所となっている。小規模ながら、ヤマハが持つ技術を注ぎ込んだホールは、楽器の音が最も美しく、そしてクリアに響く、ここでしか味わえない音の魅力を備えたホールとして定評がある。つまり、オペラを盛り立てる音楽と、歌手の迫真の歌声が聴く者を包み込み、そして一体感を感じることで、大劇場では味わえない臨場感を楽しめるのである。
そして本作ではオペラ作品として新しい表現が試みられているのも見逃せない。狂言師の和泉元彌が語り役を務め、舞台の登場人物とインタラクティブにやりとりを展開するという。この構成を手がけたのは、演出家・三浦安浩。これまでにも革新的な演出を手がけているので、本作の期待も高まるばかりである。全く新しいオペラ体験にワクワクするのは間違いない。
演出 三浦安浩からのメッセージ
カルメンとドン・ホセの物語は南スペインのセヴィリアを舞台に展開されるエキゾチックな物語です。そこには歴史的にキリスト教文化とイスラム教文化が融合したアンダルシア地方の背景の影響があります。しかも、カルメン、ドン・ホセ共にセヴィリア土着の人間ではなく、カルメンは移動民族ジプシー(ロマ)であり、ドン・ホセは北スペイン・バスク地方からセヴィリアにやってきた異邦人。カルメンは家族的な絆でジプシー仲間たちと結ばれていて、ドン・ホセは元来貴族でしたが暴力事件を起こして、故郷を追放され、今は失意の母親への罪の償いのために社会の信頼を回復しようと竜騎兵の伍長を務めています。このように極めて特殊な出自を持つ二人が、ある日出会うのです。
今回は運命の愛で結ばれた二人が、なぜ悲劇的な結末を迎えてしまったのかを、三つの視点から検証するというスタイルで演出してみます。
和泉元彌さんにこの二人の創造主ともいえる『カルメン』の原作者“メリメ”、カルメンのジプシー仲間の親分“ダン・カイロ”、ドン・ホセの竜騎兵の上司“スニガ”の三役を演じ分けてもらい、それぞれ全く異なった世界の視点から見えてくる事件の展開から、真実の二人の姿をあぶり出してゆきます。
さながら黒澤明の映画『羅生門』のようなミステリータッチの面白さで一味違うオペラ『カルメン』を堪能いただけるはずです。
カルメン藤井泰子、ドン・ホセ秋川雅史は言うまでもなく、二人の恋に絡む人気闘牛士エスカミーリョに与那城敬、ドン・ホセを慕う幼馴染ミカエラに砂川涼子と最高のメンバー。清水のりこのエレクトーンがビゼーのサウンドをダイナミックに展開します。ご期待ください!
日時:2024年2月21日(水)開場 18:00 開演 18:30
会場:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14)
料金:SS席 13,800円(税込) S席 9,800円(税込) ※未就学児入場不可
台本・演出:三浦安浩
出演:藤井泰子(カルメン)、秋川雅史(ドン・ホセ)、与那城敬(エスカミーリョ)、砂川涼子(ミカエラ)、和泉元彌(語り)、清水のりこ(エレクトーン)
詳細はこちら
文/ 唐沢耕
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tagged: オペラ, 清水のりこ, カルメン, 藤井泰子
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