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【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#76 ジャズの“揺れ”に“跳ね”を加えて普遍化したビッグバンド・サウンド~カウント・ベイシー・オーケストラ『ベイシー・イン・ロンドン』編

カウント・ベイシー・オーケストラの『エイプリル・イン・パリ』の記事(#050)では、このバンドがビッグバンド・ジャズの隆盛期だった1920〜30年代のサウンドやコンセプトに比しても決して“オワコン”ではなく、1950年代におけるビッグバンド・ジャズの“救世主”だったとして、再評価しました。

ちょうど同じ時期に収録された本作もまた、ビッグバンドを“懐メロ”ではなく、同時代のイケてる音楽として認めさせる内容だったと考えてもいいのではないでしょうか。

そこで、1950年代においてどのあたりがイケていたのか、2020年代の現在もイケているのかを、考察してみたいと思います。


Jumpin’ at the Woodside

アルバム概要

1956年にスウェーデン・ヨーテボリのコンサート会場でライヴ・レコーディングされた作品です。

オリジナルはLP盤(A面6曲B面6曲の全12曲)でリリース。ボーナス・トラック4曲を追加してCD化されています。

メンバーは、バンドマスターでピアノがカウント・ベイシー、トランペットがルノー・ジョーンズ、サド・ジョーンズ、ジョー・ニューマン、ウェンデル・カレイ、トロンボーンがベニー・パウエル、ヘンリー・コーカー、ビル・ヒューズ、クラリネットとアルト・サックスがマーシャル・ロイヤル、アルト・サックスがビル・グラハム、テナー・サックスがフランク・フォスター、テナー・サックスとフルートがフランク・ウェス、バリトン・サックスがチャーリー・フォークス、ギターがフレディ・グリーン、ベースがエディ・ジョーンズ、ドラムスがソニー・ペイン、ヴォーカルがジョー・ウィリアムス。

収録曲は1930年代からのカウント・ベイシー・オーケストラのレパートリーが並ぶ、ベスト盤的な構成になっています。

“名盤”の理由

1956年、カウント・ベイシー・オーケストラはヨーロッパ・ツアーを敢行します。そう、そのツアー・スケジュールにあったロンドン公演を収録したものが本作──ではありませんでした。

というのも、ちょうどそのころにアメリカとイギリスの音楽家系労働組合のあいだで紛争があった関係で、カウント・ベイシー・オーケストラはイギリスでの公演を中止せざるをえず、それで本作はスウェーデンでのライヴ収録となったのです。

にもかかわらず、『ベイシー・イン・スウェーデン(もしくはヨーテボリ)』というタイトルにしなかったかは、まずヨーロッパ・ツアーの成果を誇るには(スウェーデンでは)インパクトに乏しいと判断されたからだと考えられます。

そして実はこのアルバム、翌年に労組の紛争が解決したことで晴れてイギリスでコンサートができることになったときに合わせてリリースされ、イギリスのマーケット向けにカウント・ベイシー・オーケストラを売り込むための強力なアイテムとして貢献したのです。

だから収録地ではなく、ポピュラー音楽の東の中心地であるロンドンに“ベイシーあり!”ということを示すためのタイトルになった──のだと推察します。

いま聴くべきポイント

リリース当時、“ロンドンにベイシーあり!”を伝えるに足るベスト盤的な構成に加えて白熱した演奏が詰め込まれたことによって、本作は“名盤”となりました。

そして2020年代の現在においても、カウント・ベイシー・オーケストラのエッセンスに触れることのできるテキストとして、本作の選曲や内容は変わらずに申し分がないと言えるでしょう。

では、“いま”も輝く“カウント・ベイシー・オーケストラのエッセンス”とはなにか──。

それはリズムのヴァリエーション、特にタイトルに“ジャンプ”が付いている曲に特徴的なアクセント、だと思うのです。

“ジャンプ=跳ね”のリズム・アクセントは独特で、スウィングのヴァリエーションでありながらそれとは一線を画すものだと感じます。

もしカウント・ベイシー・オーケストラのレパートリーや演奏がスウィングの範疇を脱しきれないものだったら、おそらく1950年代の復活もロンドン進出もなかったのではないか──。

本作冒頭の『ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド』を聴けば、その“跳ね方”が時代を超えていると感じてもらえるのではないでしょうか。

「ジャズの“名盤”ってナンだ?」全編 >

富澤えいち〔とみざわ・えいち〕
ジャズ評論家。1960年東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる生活を続ける。2004年に著書『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)を上梓。カルチャーセンターのジャズ講座やCSラジオのパーソナリティーを担当するほか、テレビやラジオへの出演など活字以外にも活動の場を広げる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。『井上陽水FILE FROM 1969』(TOKYO FM出版)収録の2003年のインタビュー記事のように取材対象の間口も広い。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。
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