今月の音遊人
今月の音遊人:さだまさしさん「僕にとって音楽は、最高に好きなものであり、最強に嫌いなもの」
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2本のギターが運ぶ、未体験の楽しさ/GORO ITO meets KAORI MURAJI BOSSA NOVA Special Night
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2019.4.11
世界的に活躍するボサノヴァ・ギタリストで、作・編曲家、音楽プロデューサーとしての顔も持つ伊藤ゴローが、クラシック・ギタリストの村治佳織とのジョイントコンサートを開催。伊藤のオリジナルやボサ・ノヴァの創始者アントニオ・カルロス・ジョビンの作品、さらに村治によるクラシック作品や映画音楽など、多彩な音楽の饗宴が繰り広げられた。
オープニングを飾ったのは、伊藤のオリジナル作「Architect Jobim」。2017年発表の同名アルバムからの1曲で、ストリングスの流麗な調べをバックに、伊藤のアコースティック・ギターが囁くように爪弾かれる。クラシックに影響を受けたジョビンの側面に着目して作られたアルバムの曲なだけに、ボサ・ノヴァのリズミカルな雰囲気とは異なる、しっとりとクラシカルな響きが新鮮だ。
アンニュイな「Luminescence」も続けて披露し、3曲目はジョビンの作品「Chovendo na Roseira」を演奏。穏やかな明るさの中にほんのり影を感じさせるメロディが、胸の奥をざわつかせる。後方壁面に映し出される、伊藤がブラジルで撮影したという街の様子のモノクロ映像も、楽曲に宿る光と影を一層強調している。
ジョビンの代表作「Garota de Ipanema」では、村治が加わった。「イパネマの娘」という邦題でも知られるこのボサ・ノヴァのスタンダードは、伊藤によるドビュッシー風のアレンジと、村治の凛としたクラシック・ギターの響きで、情感深い世界へと変貌。未体験の楽しさを味わわせてくれた。
「私は一度もブラジルに行ったことがなく、いつか行ってみたいなと思いながら弾いてました」という村治に対し、伊藤は「僕はブラジルに行っても、海には行かないんですよ。暑いし……」などと緩やかなトークを挟んで、再び伊藤とストリングスのカルテットで、叙情的な「Wings」、穏やかな音色が心地よい「Good Night Song」、重厚な「The Isle」などオリジナルを続けて演奏。ドラマチックな展開でコンサート前半を締めくくった。
後半は村治のソロでスタート。ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」に始まって、パラグアイの作曲家バリオスの「フリアフロリダ」や、久石譲の「人生のメリーゴーランド」(映画『ハウルの動く城』より)などを、クラシック・ギター特有のノスタルジックな音色で披露。伊藤作の「Glashaus」からは伊藤とストリングスも加わり、幽玄な世界を奏でる。村治が昨年発表したアルバム『シネマ』に収録された「Romeo Juliet」では、ロミオとジュリエットの悲恋そのままの悲しいギターの響きで会場を包み込んだ。
飯島健一〔いいじま・けんいち〕
音楽ライター、編集者。1970年埼玉県生まれ。書店勤務、レコード会社のアルバイトを経て、音楽雑誌『音楽と人』の編集に従事。フリーに転向してからは、Jポップを中心にジャズやクラシック、アニメ音楽のアーティストのインタビューやライヴレポートを執筆。映画や舞台、アートなどの分野の記事執筆も手掛けている。
文/ 飯島健一
photo/ Ryo Mitamura
tagged: ボサノヴァ, 伊藤ゴロー, ギタリスト, 村治佳織
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