今月の音遊人
今月の音遊人:林英哲さん「感情までを揺り動かす太鼓の力は、民族や国が違っても通じるものなんです」
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コリー・ハートとポール・ヤングの世界初のジョイント公演「コリー・ハート&ポール・ヤング ライヴ・イン・ジャパン2019 ~ヤング・アット・ハート~」が2019年7月、日本で実現する。
“ヤング・アット・ハート”と題された今回の公演。2人の名前を合体させて”心は若く”とした、絶妙なタイトルだ。
1980年代から世界的な人気を誇ってきた実力派シンガーの2人。コリーの「サングラス・アット・ナイト」「好きにならずにいられない」、ポールの「愛の放浪者/Wherever I Lay My Hat」「エヴリ・タイム・ユー・ゴー・アウェイ」など、ヒット曲は枚挙にいとまがない。
かつてイケメン人気を誇ってきた2人ゆえ(当時イケメンという言葉はなかったが)、彼らのルックス目当てのファンも集まりそうだが、本記事ではちょっと目先を変えて、ポール・ヤングのロックな側面について掘り下げてみたい。
1983年のソロ・デビュー・アルバム『何も言わないで/No Parlez』を聴いたロック・ファンが最初に気付くのは、ポールの歌い回しにポール・ロジャースらしさがあることだろう。1曲目「カム・バック・アンド・ステイ」での”don’t wait any longer~”というフレーズは、フリーやバッド・カンパニーを彷彿とさせたりもする。
1997年、ポール・ロジャースに直接、ポール・ヤングの歌声について訊いてみたことがある。ロジャースは「彼はフリーの『ア・リトル・ビット・オブ・ラヴ』をカヴァーしていたね。グッド・シンガーだ」と語っており、自分の影響を感じるかについては、こう答えていた。
「僕自身ウィルソン・ピケットやオーティス・レディングから影響を受けているから、ポールの歌い方が僕から影響されたのか、それとも彼らから直接インスパイアされたのかわからないんだ」
また、『何も言わないで』にはブリティッシュ・ロックにおいて重要な位置を占めるミュージシャンたちが参加している。
シングル化されて大ヒットした「愛の放浪者」のイントロで印象的なフレットレス・ベースを弾いているのはピノ・パラディーノだ。
当時、セッション・ベーシストとして活動していたピノは、本作への参加をきっかけにポールのツアー・バンドに加入。その活動が忙しいため、元レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジがポール・ロジャースと結成するスーパーグループへの誘いを断ってしまった。ペイジとロジャースは代わりにトニー・フランクリンを迎えて、ザ・ファームを結成している。なおトニーは元々ロイ・ハーパーのバンドの一員で、ロイ・ハーパー&ジミー・ペイジの『熱い絆/Whatever Happened To Jugula?』(1985)でもプレイしていたが、後にブルー・マーダーの結成にも関わる。
一方のピノはポールのバンドを脱退した後、ロジャースの率いるザ・ロウで念願の初合体を果たした。彼は近年ではザ・フーやジェフ・ベックなど、第一線級のアーティストと共演している。
『何も言わないで』でギターを弾いているスティーヴ・ボルトンは、アトミック・ルースターのメンバーだった。彼が参加したアルバム『メイド・イン・イングランド』(1972)はジーンズ地の布製ジャケットで有名だが、骨のあるハード・ロック・ギターがクリス・ファーロウのソウルフル・ヴォーカル、ヴィンセント・クレインのピアノと呼応しあい、高め合っており、「スタンド・バイ・ミー」は英国ハードの極上ナンバーだ。
(なおピノ・パラディーノ、スティーヴ・ボルトンは共に今回の来日には不参加なのでお間違えなく)
さらにポールは意外なロック・クラシックスをカヴァーしており、『何も言わないで』ではジョイ・ディヴィジョンの「ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート」(ポール版の邦題は「空しい思い」)、『Rock Swings』(2006)ではメタリカの「エンター・サンドマン」をカヴァーしている。
また、1980年代の彼のバック・バンドにコーラス担当としてユーライア・ヒープ~ローン・スター~ゲイリー・ムーア・バンドのジョン・スローマンがいたり、常にロックと浅からぬ関係を保ってきた。
ところで余談ながら、実はコリーとポールの両者とも、デマ報道の被害を被ったことで共通している。
2000年、「英国の歌手ポール・ヤングさん死亡!」という記事が新聞などに掲載されたことがあった。実は亡くなったのはマイク&ザ・メカニックスのシンガーだった別人のポール・ヤングだった。ウェブ・メディアでは誤って本記事の主人公であるポール・ヤングの写真を使っているものもあり、ファンにショックを与えたのだった。
2006年、「P!NK(ピンク)がコリー・ハートと結婚!」という記事にも驚かされた。新旧ポップ・シンガーの年齢差婚か!と思ったら、実はモトクロス・ライダーのケイリー・ハートだったというオチ。これはデマ報道ですらなく、単なる誤読だったわけだが、Corey HartとCarey Hartと英語だとそっくりのため、海外には今でも2人が結婚していると思い込んでいるファンがいるという。
以上、今回のジャパン・ツアーとは関係ないのであるが、ポールが単なるフニャフニャのイケメンではなく、骨のあるヴォーカリストであることを認識しておくと、来日ライヴをよりディープに楽しむことができるだろう。
近々ぜひ、コリーの秘められた音楽性についても掘り下げてみたい。
『グレイテスト・ヒッツ-ジャパニーズ・シングル・コレクション』
発売日:2019年5月29日
発売元:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
価格:通常盤 3,000円(税込)
コリー・ハート&ポール・ヤング ライヴ・イン・ジャパン2019 ~ヤング・アット・ハート
東京公演:7月2日(火)Bunkamuraオーチャードホール
大阪公演:7月3日(水)NHK大阪ホール
料金:S席 12,500円/A席 11,500円(ともに全席指定・税込)