今月の音遊人
今月の音遊人:由紀さおりさん「言葉の裏側にある思いを表現したい」
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伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界
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2016.6.6
古楽器はモダン楽器に比べて敷居が高く、テクニック的にも難しい印象がありますが、なかには大人になってから始めても十分に楽しめるものもあります。そのひとつが、櫻井先生の専門でもあるヴィオラ・ダ・ガンバ。
「ヴィオラ・ダ・ガンバはいわば弓で弾くギターで、フレットがあるため音程が取りやすく、調弦もギターに似ています。バイオリンやチェロに比べると音出しが簡単で、初心者でも数時間も練習すれば簡単な旋律を弾けるようになりますから、アマチュアの愛好家の方も多くいらっしゃいます」
また古楽器は、その時代の慣習や文化をうかがい知れる人間的で温もりのあるもの。キットと呼ばれる小型のバイオリンや、ドローン弦を複数持ちバグパイプのような音を発するハーディ・ガーディからは人々の息使いが伝わってくるようです。
「ヨーロッパの貴族社会における大切な教養のひとつがダンスですが、当時はオーディオ機器がないため、踊りの先生はキットを携帯し、弾きながらステップを教えたといわれています。またハーディ・ガーディは、もともとは吟遊詩人や農民が使う民族楽器でしたが、18世紀になるとフランスの上流社会で田園趣味が流行し、農村や農民を象徴するハーディ・ガーディが人気を博しました」
現在ヨーロッパでは古楽器(もしくは復元された楽器)で編成されたオーケストラや、古楽の奏法をモダン楽器で再現するオーケストラは珍しくなく、古楽・古楽器がごく自然に受け入れられています。日本においても古楽に対する理解は深まっており、古楽の専門家や、古楽器とモダン楽器の両方を弾く演奏家が増えてきているそう。
「古楽の世界も進化を遂げており、20年前と今とでは演奏表現が異なりますし、モダン楽器の演奏と同様、奏者によって曲の解釈や奏法はさまざまです。古楽というと当時の演奏の再現が目的のように思われがちですが、その時代の様式を踏まえた上で新しい音楽表現を生み出していくことにこそ意味があると思います」
落ち着いた空間で、厳選された古楽器をゆったりと見学できる上野学園大学 楽器展示室。要望に応じて専門のスタッフが解説したり、特定の楽器についての専門的な問い合わせにもきめ細かく応えてくれたりするほか、年に一度、コレクションのなかのひとつの楽器に焦点をあてる「古楽器コレクション ミュージアム・コンサート」も開催されています。
ちなみに2017年3月21日(火)に開催予定のミュージアム・コンサートでは、現在修復中のタンゲンテンフリューゲルがお目見えするはずとのこと。ぜひコンサートに先駆けて、タンゲンテンフリューゲルや、その他の歴史的価値の高い古楽器を間近で見てみてはいかがでしょうか。
所在地:東京都台東区東上野4-24-12
アクセス:JR・東京メトロ 上野駅から徒歩約8分
開室日時:毎週火曜 10:30~12:30、金曜10:30~15:30
入館料:無料(1F受付にて入館手続きが必要です)
※開室時間などは変更になる場合があります。事前に電話(03-3842-1021)でご確認ください。
文/ 武田京子
tagged: タンゲンテンフリューゲル, ハープシコード, 楽器博物館探訪, 上野学園大学, 楽器展示室, 古楽器
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