今月の音遊人
今月の音遊人:マキタスポーツさん「オトネタ作りも、音楽に関わるようになったのも、佐野元春さんに出会ったことから始まっています」
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ほとんどの小学校で3年生から始まるリコーダーの授業。ひと口にリコーダーといっても、ジャーマン(ドイツ)式とバロック(イギリス)式の2種類があることをご存じでしょうか。
それぞれの特徴や素材、形状による違いなどについて、ヤマハミュージックジャパン管弦打営業部マーケティング課の加藤幸平さんと吉澤美枝さんにお聞きしました。
リコーダーはソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テナー、バス、グレートバスなど大小さまざまな種類があり、サイズが大きくなるにつれ音域が低くなります。一般的に小学校の教材で使われるのはソプラノリコーダーです。
そのソプラノリコーダーにも、実はジャーマン式とバロック式の2種類があります。
「違いは音孔(穴)の大きさで、それにより運指方法が異なります」(吉澤さん)
ジャーマン式の特徴は、ファの音の運指が音階順で簡単なこと。つまり、ドレミファソラシドの音階を簡単に吹くことができます。一方でシャープ(#)やフラット(♭)音の運指は難しくなり、ちょっと難しい曲を吹こうとすると複雑な指使いを求められます。また、ソプラノリコーダー以外はほぼバロック式なので、ジャーマン式ではせっかく覚えた運指を大きさが異なるリコーダーに応用することができません。
対するバロック式は、シャープやフラットの音が吹きやすいのですが、ファの運指が音階順ではないため、難しいと感じる児童や生徒も多いかもしれません。
ところで、同じリコーダーになぜ異なる2種類が存在するのでしょうか。
「リコーダーは歴史ある楽器ですが、廃れては復興されてきた歴史と大きく関わっています」(加藤さん)
バロック時代には盛んに演奏され、華やかに活躍したリコーダー。しかしバロック時代後期になるとフルートにその座を奪われ、忘れ去られてしまいます。その後、約150年もの冬の時代を経て、20世紀になってリコーダーは再び光を浴びることになりました。所説ありますが、そんな中ドイツで、簡単な曲をより簡単に吹くために音孔を変えて運指を容易にしたリコーダーが誕生。従来のバロック式に対して、これがジャーマン式です。
現在、約9割の小学校で使われているのは、取り組みやすいジャーマン式です。
「小学校でリコーダーを学習する目的は、音楽に慣れ親しみ、豊かな音楽体験をすることです。シェイクスピアの作品「ハムレット」では『嘘をつくよりも簡単に吹ける笛』として登場していますが、確かにリコーダーは簡単に音が鳴る楽器ですし、リコーダーは身近な旋律楽器として教育に向いているということでしょう」(加藤さん)
リコーダーはもともと木製の楽器ですが、教育用としては、価格が手ごろで扱いやすく、音や吹き心地も安定している上にお手入れも容易な、ABS樹脂製(プラスチック)リコーダーが主に使われています。
さまざまな樹脂製のソプラノリコーダーが販売されていますが、選ぶ際のポイントはどこにあるのでしょうか。
「値段によって何が違うのかについてよく質問されるのですが、樹脂製リコーダーは形状によって変わります。具体的には、ウインドウェイと呼ばれる吹き口の形状の違いによって、空気抵抗や音のつくられ方が変わるのです」(加藤さん)
ウインドウェイの形状は、もともとはストレートです。ストレート型の場合、空気抵抗が少ないため、低音はゆっくりとした息、高音はスピードのある息など吹き手によるブレスコントロールが必要になります。アーチ型は吹き口に空気抵抗をつくり、ブレスコントロールをしやすくしたものです。さらにアーチ型のなかでも、繊細なアーチを描いているものほど、より低音と高音が出しやすいという特徴があります。ヤマハのリコーダーでは、ウインドウェイの形状は3種類に分かれています。
また、リコーダーはウインドウェイから吹き込んだ息が、窓(口元の四角い穴)の下にあるラビューム(斜めに削られた部分)にぶつかって音がつくられるしくみです。
「ラビュームがザラザラした木製だと温もりと重厚感ある音色、つるつるしたプラスチック製はより明瞭な音色になります。そして木製リコーダーの音色に近づけるために生まれたのが、木目調のコーティングを施したリコーダー。見た目にも高級感がありますが、ラビュームにも同じコーティングをすることでザラザラになり、より木製に近い音が出ます」(吉澤さん)
ヤマハのリコーダーでは、「YRS-311III」、「YRS-312BIII」、「YRS-313III」、「YRS-314BIII」がこれにあたります。
ヤマハでは木製、ABS樹脂製のほか、バイオマス由来樹脂製リコーダーをラインアップしています。地球にやさしい優れた素材を採用したこのリコーダーは、「環境」をキーワードに世界で初めてバイオマス由来樹脂を使用した楽器として2014年に誕生しました。
「バイオマスはABS樹脂に比べて若干比重が重いことから、より低音と高音がコントロールしやすいという特徴があります。木製リコーダーに近い、芯のあるまろやかな音色を実現しています。」(加藤さん)
さらに、「みんなと一緒に吹きたい」という願いを受けて、手が不自由な人も演奏できる片手リコーダーは、木管楽器で培ったキイシステムのノウハウを駆使して開発したユニバーサルデザインとなっています。
リコーダーは身近な存在ですが、実は奥の深い楽器です。
ぜひ、お子さまに合う一本を探してみてはいかがでしょうか。
まとめ
①リコーダーには、ジャーマン式とバロック式がある。多くの小学校はジャーマン式を採用。
②ウインドウェイ(吹き口)の形状は、ストレートとアーチの2種類ある。
③材質は、ABS樹脂製(プラスチック)が主流だが、木製やバイオマス由来樹脂製などもある。
リコーダー製品ページ
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文/ 福田素子
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